相続手続き№4 相続財産の範囲(借金や家具はどうなる?)

 相続財産は「民法上の相続財産」と「相続税法上の相続財産」があります。遺産分割協議をするとき、相続税の申告をするときに必要な重要な知識です。

民法上の相続財産 プラスの財産とマイナスの財産

 民法上の相続財産とは、基本的には被相続人が所有していた財産すべてで、一般的なものとしては故人の預貯金、不動産、株式、自動車、貴金属などがあります。預貯金、不動産、株式、車などは行政や金融機関の相続手続きが必要になります。
 特殊なものとして損害賠償請求権も相続財産として相続人は相続します。また、債務(借金など)も相続しますので、相続放棄をしない限り相続人は返済を行う義務を負います。なお、相続放棄はお亡くなりになった方の最終住所地を管轄する家庭裁判所に行います。

【プラスの財産】
不動産の所有権:戸建の土地建物、自宅マンション、別荘、畑、山林、投資用不動産など
不動産を使用収益する権利:借地権、賃貸借契約
※県営住宅や市営住宅の使用権は個人の属性(収入など)によって利用できますので当然には相続しません。国土交通省でも平成17年に公営住宅の入居承継の親族要件を「原則として配偶者のみとし、子供への承継は認めない」とする内容の通知を行っています(ただし通知ですので法的根拠にはならない)。公営住宅を引き続き利用したい方は管理自治体へ相談してください。

現金・有価証券:現金、預貯金、株式、出資金、配当金、小切手など

各種請求権:敷金返還請求権、貸付金請求権、損害賠償請求権、慰謝料請求権など

動産:自動車、美術品、骨董品、貴金属、家財など
※家財道具も相続財産ですが、遺産分割協議書に一つ一つ記入していたらキリがありません。価値のあるもの以外は記載しないのが一般的です。そのため「本協議書に記載なき財産の一切」として包括的に記載します。処分費用が発生する場合などは家財道具の一切はどうするかを決めて記載してもいいでしょう。

その他:ゴルフ会員権など

【マイナスの財産】

債務:借金、損害賠償債務、未払家賃など

税金:未払いの税金、滞納中の税金など

その他:未払いの電気ガス水道代、医療費など

相続税申告における相続財産

 民法による相続放棄を検討する場合は、前述のプラスの財産とマイナスの財産を天秤にかけて判断する方が多いと思いますので相続財産とは何かを理解することは重要です。
 また似たような概念で「相続税の計算をする上での相続財産」があります。民法による相続財産に加え下記の財産を加除して相続税を計算します。

みなし相続財産

 みなし相続財産とは、民法上の相続財産には該当しない(民法による遺産分割協議をする必要がありません)が、死亡することによって財産が移転するということで、相続税法上は相続財産とみなされる財産です。相続財産に含めて一定額を相続税の課税対象とします。

代表的な「みなし相続財産」は次のようなものがあります。

生命保険金(死亡を原因として支払われるもの)

要件=保険料負担者:被相続人、被保険者:被相続人、受取人:相続人または受遺者

死亡退職金(亡くなった人が生前に勤めていた会社から支払われるもの)

本来被相続人が受け取る退職金を相続人が取得したときに「みなし相続」して課税対象となります。
 要件=死亡日以後3年以内に支給が確定したもの(3年を超えると相続人の一時所得)

弔慰金(雇用主が勤続年数などの要件に従って定めた功労に対して支給される金銭)

下記の一定額を超えると死亡退職金として扱われます。
 業務上の死亡のとき⇒被相続人の死亡当時の給与×3年分
 業務上の死亡ではないとき⇒被相続人の死亡当時の給与×半年分

定期金(個人年金など)

 被相続人が個人年金の掛け金を支払っていて、年金の受取人が配偶者や子供になっていた場合は、年金もみなし相続財産です。
 被相続人が死亡した時点でまだ年金の給付が決定されていない場合でも、相続税が課税されます。

葬儀費用(マイナスの相続財産)

葬儀費用は、相続人が負担するもので相続債務ではありませんが、税務上は下記葬儀費用を相続財産のマイナス財産に含めて計算することができます。

認められるもの:お布施、戒名料、読経料遺体運搬費、火葬・納骨・埋葬費、その他葬儀費用(領収者がでないものはメモを残しておいてください)
認められないもの:初七日や四十九日等の法要料、墓地代、香典返し代

家財一式

 家具、電化製品、日用品などの動産も相続税法上の相続財産に含まれ、相続税申告の明細書に記載する必要があります。一つずつ記入することが基本ですが、一つあたりの時価が5万円以下のものは「家財一式」としてまとめて「家財一式10万円」「家財一式30万円」といった形で差し支えありません。なお、5万円を超える財産(自家用車、宝飾品、骨とう品、美術品など)は個別に評価して計上します。

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